特別企画
古本屋のご主人 八木猛さん
本との素敵な出会いを
「古書店のご主人といえば、無口でお店にこもってばかり? と思いきや、国分寺「三多摩図書」の八木さんは違った。「ひげのせいか、旅先のアルゼンチンでは人気があったよ。“一緒に写真を撮って”、なんてね」。なるほど明るくてダンディ、大きな目が表情豊かで、海外でも親しまれそう。海外旅行はもう20年来の趣味という。
「旅先の古本屋をのぞくのも楽しいよ。セーヌ河のほとりには屋台のような店が連なってあったりしてね。その国のカラーがあっておもしろい」。写真集などを仕入れてくることもあるという。仕事も悠々、という感じ。うらやましい。
「三多摩図書」は、大学を出てすぐに開業したという。静岡出身の青年が大手の就職先を蹴って、いきなり商売を始めた…周囲にはなんと無謀な、とも思えただろう。しかし、この40年、八木さんは古書店経営にとどまらず、ユニークな地域の文化活動も手がけてきた。まだ「国分寺市史」がなかった頃、「多摩の歴史」の刊行を発案。以下全8巻の作成に関わった。また、国分寺駅南口商店会の会長として、商店主が英語で応対するためのマニュアルをつくった。柔軟な発想と行動力の持ち主。そんな八木さんは古書とどうつきあっているのだろう?
「古書店の魅力は本とのめぐりあい。探していた本が、何かの拍子に見つかった時は本当にうれしい」。仕入れはお客さんのため、といいながらそんな時は胸おどる様子。生来の本好きが顔を出した。
「ある大学教授が同じ本を2度買おうとするのを、『先生、先日買って行かれましたよ』と、止めたこともあります。お客さんが何を買ったかをおぼえていて、次に好みの本を勧めるのが楽しみ」。
情報過多のこの時代、なんとなく話題の新刊を読んでいる方も多いのではないだろうか。自分の好みを知っているお店で「時代をこえて価値のある本」を勧めてもらえるなら、読書ライフはもっと豊かになりそうだ。 写真−海外で華麗に舞う八木猛さん
|